就職活動で初めて聞いたワード「自己分析」。ハマる人はハマるらしいが自分の場合、役に立たなかった。そんなの改めて言われなくてもわかるわ!当時はそう思っていた。30歳になってくると自分が周りと比べてどんなタイプか、何が得意か、がわかってくる。では当時の自分にも同じことができただろうか?おそらくできない。というのも20代前半はまだ自己が確立されきっていないから、分析する相手がいない。ハマらない人は無理にこのフレームワークに当てはめる必要はない。
1、自己分析ってなんだっけ?
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自己分析をやる理由は2つあるようだ。1つは就活の軸、就職する際に大事にしたいことを考える要素にしたいから。確かにこれは大事だ。だが本音を言えば「働きたくない」が正解だろう。そもそも就活の軸、というのがわからない。会社に入って働く、というのは労働契約に基づいている。従業員は労働の対価として給与を得る。それ以外に働く意味を見出すのは個々人の理由だ。今、自分は30代になるが同世代は誰も働く意味など考えていない。みんな考えているのは給与や労働時間、職務の責任について。これも会社が労働契約に基づいて与えているものに過ぎない。
また、転職を考えるときに就活の軸を再び考える人は自分の周りにはいない。転職理由は概ね人間関係の悪化であるし、転職先を考えるときも給与や勤務時間、勤務地、職務内容の希望を出すが、自己分析の結果を考える人はいないのではないだろうか?同期や前の会社の元同期と話をしても就活の軸などは考えない。
やはり必要ではなかったのではないか。
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もう一つの理由はここから自己PRに繋げられるため。これは少しは理解できる。自分が今までに取り組んできたこと、特に直近で真剣に取り組んだことを振り返ってみて何が得意なのか?を分析する。企業側に自分の長所や採用後のメリットを提案できる要素となるため、この意味においては正解だろう。だが必ずしも全ての人にとって有効か?というと違うと思う。
働くというのは全員が強制されて好きでもないことを真剣に取り組む、という行為だと考えている。個々人の価値観はそれぞれだが集団で取り組んで成果を上げるために役割分担を行い、自分の長所を活かせるポジションでパフォーマンスを出す。そもそも職場にはさまざまな価値観の人がいて働いている。学生生活までだと強制的に真剣に取り組まないといけない、という環境が珍しい。部活もサークルも基本的に好きでやっているものだし、好きなものが一緒の集団という意味で価値観は一定程度確保されている。
「今までの人生では様々な価値観を持つ人の集団に放り込まれて強制的に何かに取り組む、ということはありませんでした。しかし、野球が好きなメンバーで構成される野球部では周りと協力して取り組んできました」。正直に言うと、仕事とは一線を画す。仕事と似たような環境というのがそもそもあまりない。地方の消防団などは一緒かもしれないが、あまりパッと浮かばない。
2、20代は価値観の醸成
これも振り返ってみてわかったことだが20代は価値観の醸成期間だった。この時期は他人と比べながら自分の個性や感性を自覚できるようになってきた。大学生の時には少しくらいは自分と他人の違い、というのはわかるものだが言語化して表現するのは難しい。自分が内面で感じていること、というのが他人も同様に感じているか、などはわからないため内面部分を表現するしかない。それに共感してくれ人は自分と似た価値観を持っているというのがわかる。自分の内面を表現し、共感なり否定なり、フィードバックを返してもらわないと見えてこないのだ。この時点でハードルが高い。あなたの価値観を教えてください、というのは乱暴な聞き方だし20代前半で明確に解答できる方が珍しいと思う。
先に述べた仕事という特殊な環境だと様々なストレスや負荷が与えられるため、それに対する反応や対応を比べることで自分が見えてくる。企業側のいう「自己」とは「他人と比較してしたときの自己」なのだ。そのため過去の自分を振り返って何を思ったか?という自分に対する質問を繰り返しても見えてこない。知りたいところはそこではないのだ。
ところで脳は20代後半まで成長するらしい。自分も20代後半になって「簡潔に説明する能力」がアップした実感がある。別に何かをやったわけでもないし、能力向上するために本を読んだわけでもない。なんなら2年くらい仕事をやめてボケーっとしていた。それでも子どもの身長が伸びるように自然に説明力がついていた。焦らなくても成長する。これを勘違いした人は「仕事で成長できた」などと言うが、本当は生物学的に成長しただけなので別に仕事は関係ない。ただその期間に仕事をしている人が多いだけだ。
3、30代になるとどうか?
30歳になると良くも悪くも自分が他人とどう違うのか、が明らかになってくる。そして自分のロールモデルがどこにいるのか?も真剣に考えるとわかってくる時期だろう。ダメな部分も受け入れられるし、良い部分は自信を持てるようになる。ようやく自己が完成するので面接なども就活時に比べると随分上手くなっている。
この先どうしていくべきか?結婚して子どもができたばかりだから育児もしたい。一方で子どもの学費が必要になるのでそれなりの給与が欲しい。そんな理由で転職を考える。(ここで自己分析という言葉はでてこない。そんなもの無用だからだ。)
企業側からは成長云々ではなく成果を早く出すように求められ、それがエスカレートする形で会社員の人生が続いていく。給与が上がる反面、とにかく成果が求められていき、責任も増していく。だから自分のやりたいことを考える余裕がなくなっていく。ある意味で「やりたいこと」への憧れや希望がなくなっていく。仕事が人生で大きなウェイトを占めるのは事実だが、それが全てではない。やりたくない仕事であっても子どもと一緒に遊ぶ時間が何より楽しい、と答える人は大勢いる。
まとめ
20〜30歳くらいまでの価値観の推移はこんな感じである。自己分析は就活時くらいしか使うことがないし、歳を重ねるにつれて重要度が低くなる。逆に給与や休暇などの条件が良い会社は長く働ける。30代以降のことを考えるとベースはあくまで給与などの条件。その次にやりたいこと、であると思う。自己分析はフレームワークの一種だと思うので、自分にハマらないな〜と思う人は投げ出して構わない。