・序章

・年功序列とこれからの人材獲得

・頑張りすぎた結果の悲劇

・限界まで仕事をすることで自分を知る、という幻想

・能力はストレッチするか?

毎日遅くまで働いて家に帰ってシャワーを浴びたらまた会社に出ていく。

ようやく仕事がひと段落ついて、久々に家のベッドで眠ったと思ったが翌朝目を覚ますことがなく・・・。

効率の良い働き方が推奨される中で、こういった悲しいニュースを見ることもあります。

一昔前では仕事を徐々に覚えていき、働き盛りの30代後半から40代前半くらいが過労死してしまう年齢層でした。

しかし、今では20代の若年層でも亡くなるケースが出てきています。

限界まで働くことで自分の限界を知る。特にこれからが期待されている若手にはこのタイプが多いでしょう。仕事を限界までやったからといってすぐに能力が伸びることはありません。ストレス耐性も20代に入れば伸びることはないため、限界を知ると能力が伸びるというのは幻想なのです。

無理に頑張ると心か体にガタが来てしまうので、体を優先して守ってあげましょう。自分しか守ることができないので、周りに流されないことが大切です。

・年功序列とこれからの人材獲得

多くの日系企業では年功序列で若手に多くの業務を与えています。

これも説明すると長くなるのですが、できる限り安い労働力で働かせようとすると年収の低い若手社員に働かせるのが会社にとってメリットが大きいです。

能力も体力もピークを過ぎた高年収の50代にたくさん働いてもらうよりも、能力も伸びるし体力もまだ十分にある定年収の20代を働かせることで効率よく会社を回す。経営者はこう考えています。

そして、若い時に頑張って働いた分は歳をとったときにリターンが返ってきます。具体的には「働かなくても年収は上がり、クビも切られない」これが年功序列のメリットです。要するに働かなくてもお金がもらえる時期が来るので、若いうちは黙って働け。ということです。

しかし、この制度が続く可能性は低いでしょう。

少子高齢がドンドン進む日本では若い労働力の価値はこの先ガンガン上がっていきます。当然ですが、待遇を良くしないと若い人が入ってくれないため「若手に無理をさせる会社」を変えなければなりません。

(今、若手に皺寄せをさせる会社は全力でを隠していますが・・・)

また、人口が減っているということは能力の高い人の絶対数も下がります。優秀な人はより熾烈な競走で獲得しなければならず、仕事のできる人に多くの仕事を与える会社は徐々に回らなくなっていきます。

会社としては変えなければならないことがたくさんありますが、今までずっと若手の努力や踏ん張りに任せて業務を回してきたので体制を変えるのは簡単なことではありません。

50代の社員からすると「俺は若い時に家庭を顧みず働いたんだから、少しは楽をさせて欲しい」と思うのも無理はありません。

しかし、この状況が変わってきているため誰かが割りを食わないとなりません。一言でいうと入社から定年退職までずっと休みなく走り続ける必要があるのです。

・頑張り過ぎた結果の悲劇

20代が頑張らざるを得ない理由には、年功序列以外もあります。

一つは厳しい競争が与えられる業界、外資系などで働く人たちです。

以前、海外の話ですがインターン中に過労死したというニュースがありました。

外資系金融の1ヶ月インターンで、何日も徹夜を重ねて働き続けた結果、過労死してしまったのです。

日系企業のインターンでここまで苛烈なものはないと思いますが、外資系金融の就職ではインターンで採用が決まります。

日本でも人気の高い外資系金融ですが、高年収の裏には厳しい競争があります。(ちなみに入社後もこのような働き方をしている人も多いです。気力も体力も人並み以上でないと続かないでしょう。)

日系企業でも管理職が多すぎるため、若手の出世が遅れる傾向にあります。すると会社側は切磋琢磨という言葉を使って同期同士で出世を争わせるケースがあります。昇進意欲の強くない人でも、「同期に遅れをとりたくない」という思いで頑張るケースがあります。

何時間も働いて働いて働いて、その結果が自らの死というのはあまりにも悲しい話です。

・限界まで仕事をすることで自分を知る、という幻想

今の50代や60代以上で成功した人たちには猛烈に働いたからこそ得られるものがある。と主張する人がいます。

「仕事で成功したいのなら限界まで頑張って、その限界を伸ばしていくんだ。」こんなこと優良企業で出世した人が言うと、見習って自分も!と考えてしまいます。

すごく立派な方達が多く、本を読むと説得力もあります。

が、これは他人に押し付けてはいけません。穿った見方をすると出世をした今だから言えるポジショントークにも思えます。

また、自分が成功した理由が本当に努力をしたからなのか?というのは案外わからないものです。

自分自身では努力によって仕事ができるようになって出世した。と思っている人でも、実際は単に人事の巡り合わせで出世しただけ。というケースも往々にしてあります。

この手の成功者は「当時、限界まで頑張った同僚がいたが身体を壊してしまった。」と言う話はしないでしょう。この人が成功した理由は単純に体が強かったから、だけかもしれません。

心理学的にも人間には結果ありきで原因を作り出したがる傾向があります。本当は運が良かっただけなのに、最もらしい理由を後付けしただけという可能性もあります。

限界まで働くと過労死のリスクは抱えることになります。

限界まで働いて死んでしまっては悲しすぎるので、人の言うことは鵜呑みにせず、リスクとリターンを考えましょう。

何度も言いますが命の代償というリスクは極めて高いため、就職や出世による高年収くらいのリターンではトライする価値はないと思います。

・能力はストレッチするか?

仕事を頑張れば頑張るほど能力は伸びるのでしょうか?

結論から言うと長い時間を積み重ねることで能力が伸びるのは確かです。

有名な話だと「1万時間続けろ」というものがあります。

これは、どんなことでも1万時間も費やせば一流になれるというものです。1日14時間労働を365日続けるとすると、約2年で達成できる数字です。かなり厳しい数字ですが、実際にここまでやると周りが脱落してくるので説得力はあります。

しかし、これは単純に慣れの問題です。

瞬間的に徹夜をして仕事の時間を伸ばしても、すぐに能力が上昇するわけではありません。

また、先に述べた限界を知る、という話ですがストレス耐性は明確にストレッチしません。小学生の間にストレス耐性は決まるため、20代ではもう遅すぎるのです。

過度なストレスに耐えたからこそ、自分の限界が伸びた。というのは正しいとは限りません。

結局のところ仕事の能力もすぐには伸びず、メンタルの限界もストレッチしません。

過労死のリスクを冒してもリターンがないことは自明です。

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